「喫茶去(きっさこ)」。
直訳すれば、「お茶を飲んでいきなさい」。
禅の言葉として知られていますが、
その背景を知ると、とてもやさしい言葉だと感じます。
身分や立場、初対面かどうか、話の内容や結論。
そういったものをいったん脇に置いて、
まずは一服のお茶を、という姿勢。
答えを急がない。
評価もしない。
ただ、今ここで一息つく。
茶道においても、和菓子とお茶の時間は、何かを決めるための場ではありません。
正しさを競うわけでも、成果を出すわけでもない。
静かに味わい、静かに過ごすための時間です。
和菓子屋の仕事をしていると、
つい「うまくやろう」としてしまう瞬間があります。
もっと良い形を、もっと喜んでもらえるように、と。
それ自体は大切なことですが、知らず知らずのうちに、自分を追い込んでしまうこともあります。
そんなとき、「喫茶去」という言葉を思い出します。
今は考えなくていい。
今は比べなくていい。
まずは一息つこう。
あんこを炊く火を少し落とし、湯気の立ち方を眺めながら、自分の呼吸に気づく。
忙しい毎日の中で、立ち止まることは、怠けることではありません。
むしろ、
次に進むために必要な時間です。
日曜日の朝。
何もしなくてもいい時間。
何かを決めなくてもいい時間。
ただ、お茶を飲む。
それだけで、月曜日の景色が少し違って見えることもあります。
喫茶去。
まずは一服。
今日も、
日日是好日。
