010 木挽町よしや「春」

春が近づくと、
和菓子の表情が少しずつ変わっていきます。

同じあんこでも、
どこかやわらかく、
やさしい味にしたくなる。

不思議なものです。

気温が上がり、
空気がゆるみ、
人の気持ちも少し軽くなる。

その変化は、自然と手の動きに表れます。

小豆を炊いていると、冬とは違う“音”がします。

水の含み方も、
火の通り方も、
ほんの少し変わる。

だから、
同じようにやっていても、
同じにはならない。

季節に合わせる、というのは、
特別なことではなく、
気づくことなのだと思います。

今日は少し暖かい。
今日は風がやわらかい。

その小さな違いに、手を合わせていく。

桜の季節が近づくと、
自然と「春らしいもの」を求められます。

けれど本当は、形だけではなく、
味や余韻の中にも、春を感じてもらいたい。

ふわっと軽く、
どこか儚く、
あとに残りすぎない甘さ。

そんなあんこを目指して、
今日も鍋に向かいます。

日曜日の朝。
少しだけ、空気がやわらいできたこの頃。

季節は、確実に進んでいます。

今日の一日も、
今だけの一日。

今日も、
日日是好日。

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