007 木挽町よしや「初心忘るべからず」

「初心忘るべからず」。

よく知られた言葉ですが、
ただ
最初の気持ちを忘れない」という意味ではないと、
最近になって思うようになりました。

能楽の世阿弥が残したこの言葉には、
三つの初心があるといわれます。

はじめて志した日の初心。
未熟だった頃の初心。
そして、熟練した後の初心。

初心は、過去に置いてくるものではなく、
その時々に生まれ続けるものなのだと。

和菓子づくりも同じです。

最初に小豆を炊いた日のことを覚えています。
火加減もわからず、鍋の前で不安になりながら、ただ必死に向き合っていました。

あのときは、うまくやろうとも、評価されようとも思っていなかった。
ただ、目の前の豆をどうにかしたい、それだけでした。

続けていくと、技術は積み重なります。
経験も増えます。
けれど同時に、慣れも生まれます。

慣れは悪いことではありません。
しかし、油断と隣り合わせです。

「これくらいでいいだろう」という小さな甘さは、ほんのわずかに味を変えます。

だからこそ、初心。

今日の小豆は、はじめて向き合うつもりで。
今日のお客さまは、はじめて迎えるつもりで。
今日の一日は、はじめて生きるつもりで。

それは、緊張し続けるという意味ではありません。

むしろ逆です。

何年続けていても、自分はまだ途中なのだと認めること。
まだ学ぶことがあると知ること。

それが、熟練の中の初心なのだと思います。

日曜日の朝。
明日からまた同じ仕事が始まる、
そう思う人もいるかもしれません。

けれど本当は、同じ日は一日もありません。

新しい月曜日。
新しい一歩。

初心を携えて。

今日も、
日日是好日。

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